鍼灸師のソウル鍼道中

韓国で韓医学を学びつつ綴るブログです

四象医学(1)

 

 昨日、韓医学について少々触れましたが、韓国では医療者ではない一般の方々の会話の中でも体質に関する会話を耳にすることがあります。「私の体質は太陰人だから○○は体に合わない」というような感じです。日本よりも、鍼灸治療や漢方薬に対する抵抗がなく、その効果を実感しているように思われます。

 

なぜ「体質」に対しての認識があるかといいますと、「四象医学」という理論体系が韓医学にあり、現在でも臨床で広く用いられている診断基準の一つであると考えられます。

幼い頃、あるいは大人になってからでも、韓医師から「君の体質はこうだ」と診断されることがあるわけです。しかも、血液型のようにタイプが四つしか無いため一般的にも覚えやすく、自身に当てはまっていれば納得して関心も高まる可能性があります。

 

この四象医学という理論は、朝鮮末期の漢方医学者である東武イ・ジェマ(李済馬、1837~1900年)先生が、人ごとに先天的に持って生まれた体質が違うので、同じ病気でもその治療が異なるのだと考えられました。そして、「東医寿世保元」という文献を通じて太陽、少陽、太陰、少陰という四種類の体質があると主に主張された理論です。

イメージはこんな感じ

 

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東洋医学(中医学)では、人の臓腑は、気血の働きの影響を受けてその機能が正常に作用するわけですが、この気や血が不足(虚)したり、内因や外邪と呼ばれる要素によって害され(実)て病気になると考えました。体質が違うということは、生理、病理および薬理が違うと考えるべきであり、その理論をベースとして「四象医学」理論ができたのです。

 

そして東武イ・ジェマ先生は、「太少陰陽人の臓腑機能に大小虚実があるということは天性の品性で再論の余地がない」と主張され、体質は人間が持って生まれて生を終える瞬間まで変わらなく、その拮抗作用によって生理機能を営むという体質固定論を強調されたそうです。

 

しかし、韓医学学会でもこの理論に対して科学的な根拠を疑問視する意見があったこともあり、2006年~2015年にかけて四象医学を根拠とした体質診断技術、及びその体質に合わせた薬の開発を目標として「イ・ジェマ、プロジェクト」が進行されました。

 

つづく...