鍼灸師のソウル鍼道中

韓国で韓医学を学びつつ綴るブログです

四象医学(2)少陰人

四象医学(1)で体質を四つに分類すると記載しましたが、その四つのタイプのうちの一つが「少陰人」です。

韓国では小陰人がもっとも多いとされており(統計があるかどうか不明ですが...)、これまでに漢方医学の病理薬理がこの体質を主として発展してきたといわれてい
ます。
少陰人は本来、脾臟が弱く、腎臟が充実しいているために体のバランスが良く取れており、顔つきは一般的に小さな方が多いとのことです。
女性はたとえ体格が小さくても、骨格がしっかりしており妊娠しやすい傾向があります。

また、容貌が細々として女性は可愛らしく愛嬌があふれ、額が少し広く目、鼻、口があまり大きくありません。目には精気があふれているように見うけられます。
皮膚はとても柔らかくて汗が少なく、歩き方が自然でおとなしいとされています。
話す時は静かで冷静で理路整然としてますが、時には熱く理論を展開したりもします。

性格は内気で消極的ですが、社交的な面もあり表向きにはとても柔らかで謙遜なタイプです。
小さな事にも配慮心があり、反面では過敏なためにいつも不安でいらいらしやすいです。
また、実利のためには手段と方法を選ばず、頭が聡明で敏捷、判断力が早くて、自分が担当することはきちんと処理します。

目上の人によく見られますが、時には行き過ぎてこびへつらいになったりして嫉妬心が強い方です。
偏見を持ったり人を誤解しやすく、一度決めたことはなかなか曲げず、過去のことを再び再論することがしばしばあり、いつも相手を警戒する気持ちが隠されています。

太陰人はあまり汗をかく必要がなく、汗が必要以上に出たり寝汗をかくようになれば、これは元氣が完全に低下した症状としてみます。 そのため、一般的にインフルエンザ、流行性感冒などでたくさんの汗をかくことになれば、合併症をもたらす可能性が高く、なかなか症状が改善しない時には元氣を助ける薬を使えば風邪が緩和されます。

消化に常に神経を使い、気が惹かれない食べ物は消化ができないものが多く、薬と食べ物は必ず脾胃を中心に選択しなければならず、胃腸病を患う人の中には少陰人の方が多いとのことです。

一般的に昔から貴重な薬で使用されてきた「人参」「山蔘」は、人の体温を調節して補氣する薬で少陰人にもっとも良い補薬とされています。

→ 次回は太陰人について

四象医学(1)

 

 昨日、韓医学について少々触れましたが、韓国では医療者ではない一般の方々の会話の中でも体質に関する会話を耳にすることがあります。「私の体質は太陰人だから○○は体に合わない」というような感じです。日本よりも、鍼灸治療や漢方薬に対する抵抗がなく、その効果を実感しているように思われます。

 

なぜ「体質」に対しての認識があるかといいますと、「四象医学」という理論体系が韓医学にあり、現在でも臨床で広く用いられている診断基準の一つであると考えられます。

幼い頃、あるいは大人になってからでも、韓医師から「君の体質はこうだ」と診断されることがあるわけです。しかも、血液型のようにタイプが四つしか無いため一般的にも覚えやすく、自身に当てはまっていれば納得して関心も高まる可能性があります。

 

この四象医学という理論は、朝鮮末期の漢方医学者である東武イ・ジェマ(李済馬、1837~1900年)先生が、人ごとに先天的に持って生まれた体質が違うので、同じ病気でもその治療が異なるのだと考えられました。そして、「東医寿世保元」という文献を通じて太陽、少陽、太陰、少陰という四種類の体質があると主に主張された理論です。

イメージはこんな感じ

 

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東洋医学(中医学)では、人の臓腑は、気血の働きの影響を受けてその機能が正常に作用するわけですが、この気や血が不足(虚)したり、内因や外邪と呼ばれる要素によって害され(実)て病気になると考えました。体質が違うということは、生理、病理および薬理が違うと考えるべきであり、その理論をベースとして「四象医学」理論ができたのです。

 

そして東武イ・ジェマ先生は、「太少陰陽人の臓腑機能に大小虚実があるということは天性の品性で再論の余地がない」と主張され、体質は人間が持って生まれて生を終える瞬間まで変わらなく、その拮抗作用によって生理機能を営むという体質固定論を強調されたそうです。

 

しかし、韓医学学会でもこの理論に対して科学的な根拠を疑問視する意見があったこともあり、2006年~2015年にかけて四象医学を根拠とした体質診断技術、及びその体質に合わせた薬の開発を目標として「イ・ジェマ、プロジェクト」が進行されました。

 

つづく...

 

 

鍼灸師と漢方薬

「東洋医学」という言葉を鍼灸学校在学時に何度も聞きましたが、日本では「中医学」のことをそのように呼ぶ傾向があるように思います。

「東洋」というからには、中医学のみならず、韓医学やインドのアーユルヴェーダなども含んでいる言葉のようにも思えるのですが...

 

ここ、韓国ではどうかといいますと、一般的に「韓医学」と「中医学」を分けて考えているように思います。いえ、分けているというよりは、中国から伝達された「中医学」を基礎として、それを韓国独自に発展させた「東医宝艦」と「四象医学」という理論体系が取り入れられたのが「韓医学」と言えるのかもしれません。

 

いずれにしても、中国の「中医師」や韓国の「韓医師」は名前の通り、医師なわけでして鍼灸や漢方薬を処方して治療行為を行うことができます。韓国では、「韓医師」になるために大学で「韓医学科」を卒業し国家試験に合格しなければなりません。

聞くところによると、西洋医学の病院のように専門性が高まっており、「脊椎専門」とか「美容専門」とか「肥満治療専門」を謳った「韓医院」が見受けられます。

 

日本はどうかというと、私のように「鍼灸師」という国家資格を持つ先生方はたくさんいらっしゃいますが、中国や韓国のように漢方薬の処方はできません。

ご存知かと思われますが、日本では漢方薬も医師が処方しますよね。

 

鍼灸学校在学中に学んだのですが

 

東洋医学(ここでは鍼灸学校で学んだ呼び方で記載させていただきます)の治療概念には「外治方」と「内治方」という考え方がありまして、簡単にいいますと、

「外治方」- 外から何らかの刺激を加える治療・・・鍼灸やマッサージなど

「内治方」- 体の内部に何かを取り入れる治療・・・漢方薬など

 

症状にもよりますが、基本的にこの両方のアプローチを必須とする医学と言えるのではないかと思います。

 

鍼灸治療の効果は、臨床で実感しては来ましたが、いざ韓国で韓医師の治療を見てみると、やはりこれが本来あるべき「東洋医(という名前でいいかどうか...)」の姿なのではないかと思わされます。

 

韓国にも四象医学や東医宝艦など、今も臨床に広く使われる理論体系があり、今後少しずつ整理して掲載したいと思います。